金を出すから、ロケットを作らせてくれ!
~小さな会社の大きな挑戦~

で作っちゃった方がいらっしゃいます。その方は植松電機専務取締役兼カムイスペースワークス代表取締役の植松 努さんです。
僕は普段、日経産業新聞を通勤時に読んでいて一通り目を通していますが、確かに北海道でロケットを飛ばすとか何とかという記事が以前ありました。その時は「ふぅ~ん、そうなんだ。あっちこっちで頑張っんな」ぐらいで深く知ろうとは思いませんでした。大阪では「まいど1号」という衛星を上げるプロジェクトがあるなど、自分たちで宇宙に挑戦しようという方たちが少なからずいらっしゃいまが、しかし宇宙の分野は開発に時間がかかるので僕としては官のJAXA(宇宙航空研究開発機構)の活動を追いかけるだけで精一杯なのです。
そんな北海道でロケットの記事も記憶の中から消えかけていたころ、先月北海道の知人に「今度H-ⅡAの打ち上げあるんだよ」と僕が宇宙関連に興味があると知らせたら本を送ってくれました。その本が「宇宙ロケットに夢をのせて~小さな会社の大きな挑戦~」です。
この本は、その植松 努さんが読書普及協会設立4周年イベントでの講演を本にまとめた講演録です。
植松さんらのロケットとは
北海道大学の永田先生が主導となって研究・開発を行っている「CAMUI(カムイ)型ハイブリッドロケット」です。
植松電機さんは開発と製造に関わり、この度1機210万円で受注を開始したようです。
このハイブリッドロケットというのは、私は技術的な話はよく解りませんが、一般にはロケットというのは大きく分けて2種類に分類されます。
液体ロケット
スペースシャトルの主エンジン、日本のH-Ⅱロケットなどがそれにあたります。
燃料(液体水素)と酸化剤(液体酸素)を混合させ燃焼させるタイプです。
燃料には他にヒドラジン、ケロシン、酸化剤には四酸化二窒素なども使われているタイプがあります。
特に液体水素は取り扱いが危険で、打ち上げの少し前にタンクに注入するのですが、タンクに注入してから打ち上げが延期になると一度タンクから液体水素を抜いてタンクを検査しなければならないので、「今日ダメだから明日打ち上げよう」という訳には行かず1週間ぐらい伸びてしまいます。
固体ロケット
火薬または固形ゴムと酸化剤をあらかじめ混合させ固形させたロケットです。
日本ではISAS(宇宙研)のM-Vロケット(はやぶさを打ち上げたロケット)などが有名です。
燃料の扱いが簡単な代わりに燃料が燃え尽きるまで飛びますので後の軌道修正などが必要です。
あと、打ち上げ時の震動も難点です。
でCAMUIロケット(ハイブリッドロケット)とは
プラスチック(ポリエチレン)を燃料として酸化剤に液体酸素を使用したものです。
この方法だと大きな推進力がとれないという弱点がありましたが、燃焼ガスを固体燃料表面に順次衝突を繰り返すよう工夫をして高出力化に成功しました。
本書には、「燃料は特殊な複合材で出来ています。特殊と言ってもホームセンターで車の補修用に売っているFRPです。」だそうです。
で先に210万円で受注を始めたとありますが、なぜ安い値段でロケットができるかというとロケットとか航空機というのは部品がオリジナルです。戦闘機の修理用のスパナが100万円とかという話があるぐらいですが、このCAMUIロケットは汎用のパーツを使用して作れるようにしてあるからだそうで、これもホームセンターで調達できるものを使用してコストを下げ、また、燃料が爆発しないのも安全に対するコストを下げることに繋がり、危険物の許可もいらないそうです。
植松電機の社業は主にリサイクル業向けのバッテリー式マグネットの開発・製造です。以前はお父さんと二人だけで自動車の電装品修理を行ってきましたが、基本的に自動車が壊れなくなってきたというのと、自動車修理業というのが「修理」ではかく「パーツ交換」に変わってきてしまい将来性が無く先細りしてたことから、お父さんが以前からバッテリーで動くマグネットを改良して作っていたものに軸足を移してリサイクル業の能率を上げる製品提案を行う会社にしたということです。
植松努さんは、幼いころ紙飛行機に夢中になり、将来「飛行機とかロケットとかの仕事がしたい」と思いを抱くようになり、航空機を作っている大手メーカーの技術者として就職しましたが、飛行機に対する熱意の周りとの温度差に落胆して退職したそうです。それで家業をついでますが、北海道大学の先生から「ロケットを作れませんか?」と尋ねられ、「60年前に誰かが作ったんだから、作れないほうがおかしい」と思い、本業の傍らロケットを作り始めたそうです。
無重力実験施設も作りました。
無重力状態で材料などの実験を行うには、普通お金がかかります。NASAなどは空軍上がりの専属パイロットがいて、ジャンポジェット機やガルフストリームなどの旅客機やビジネスジェット機を高高度から自由落下させて行っているのですが、自前の飛行機が無いところは飛行機のチャーター代とか、パイロットの技量だとか問題となり、なかなかできません。
ですので地上で無重力実験が行えるよう、高い塔(ドロップタワー)を作ってそこから実験機材のカプセルを落として実験しています。
その施設は日本では岐阜県と植松電機さんの北海道の赤平、海外ではドイツの1ヵ所と世界で3ヵ所しかありません。
以前、北海道に炭鉱跡を利用した施設もありましたが、やめてしまったようです。
植松さんは自前で無重力実験塔を作ろうと業者に見積もりをお願いしたところ3億円と言われたそうです。でよくよく調べてみると自分たちで自前で出来そうだと図面をひき、作った結果2,400万円ぐらいで出来たそうです。
植松さんの夢
それは、
○住むためのコストを十分の一にすること
○食べるためのコストを半分にすること
○勉強するためのコストをゼロにすること
だそうです。
「宇宙開発とい場で修練してきた人たちがこれらの問題が解決するようになればいいなぁ」と考えているようです。
今、植松さんは小学校にお願いをしてロケットの無料授業をしているのだそうです。なかなか学校側の理解が得られないようですが、それでもご理解を頂いて何校か行っています。(うらやましい)
この書評にもならない本書の感想ですが、HPやAPPLEという会社がガレージから出発してたり、ホンダが町工場から出発したのと似ているかな?と思いました。今やこれらの企業は世界に冠たる大企業です。これらにはイノベーションで大きくなった会社もありますが、たたき上げられた技術者がコツコツと積み上げた大きくなった会社です。そこには「自分で作ろう!」という気概が感じられます。「無いものは自分で作れ!」「痒い所に手が届かなかったら自分で何とかしろ!」という具合です。
自分のことですが、中学校の時、進路のことになっていきなり学校から渡されたのはリクルート編集の学校要覧でした。その時にリクルートという会社は何?とかなり違和感を感じました。私はこの学校要覧を使って検討するもでもなく行きたい高校を決めていましたど(専門科目が県に2校しかなかったので)、小さいころから「危険!」「あぶない!」と色々禁止されて、将来楽出来るのはどんな職業かと親から言われ続けて来た子供はこのような業者が作ったレールに乗っかるしかないのかなぁ~。
確かに知識と言うものは重要ですが、今の学校は「知識」に偏って、体験させる、作らせるということがお座なりになってはいやしないか、「体験」も体験させるだけではダメで最後までやり通す、完成させるということが大事で、成功体験が無いのに安易に「自信を持ちなさい」なんて言えないだろ!
知識なんて金出して本を買ったり、図書館で幾らでも転がっています。「俺、それ知ってる」自慢の子供を沢山輩出してもそれを何かに作り上げるという力がなければ何もならないと思います。知識をタダ同然で手に入れて喜んでいる国が日本の周辺にありますが、その国がどのようになるか見てみると良いと思います。一時的に潤っていたその国は今、貿易赤字、外貨不足で倒れかかっています。今の私たちの日本に求められているのはビジョンとそのビジョン達成へと突き進む力です。ビジョンは子供の頃読んだ空想科学小説やアニメ、マンガでも何でもいい、将来こうありたいと思うもの、願うものを信念としてもいいと思います。進むしか無いのです日本は!
本書は、さんだる文庫より
1,000円(税込)で出版されています。
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